水景に魅せられて

お酒やアクアリウムなど

鮮やかな黄色の小さな虫のようなもの

真っ白なだだっ広い空間の中でただ走っていた。

「後ろから来たぞ!!、みんなバラバラに逃げろ!!」
ケンの後ろを走っていた子供が鮮やかな黄色の小さな虫のようなものの餌食となった。
「早く走れ!!」
ケンはスピードを緩め大声で子供に向かって叫んだがもう遅かった。
その場に倒れこんだ子供をどうすることも出来ずにケンは全速力で走り出した。
息ができない。
その鮮やかな黄色の小さな虫のようなものは前からも襲って来た。

大量のその中にケンは突っ込んだ。
「うぉぉぉぉ!!!」
がむしゃらに払いながら走った。
しかしそれはケンの鼻や口から入り込みケンを侵していく。
足がもつれ倒れこむ。
息が出来ない。
鮮やかな黄色の小さな虫のようなものを体から追い出すかのような大きなくしゃみを思っ切りした。
「ビャックション!!」

 

ケンは飛び起きた。

 

 

この花粉の時期は寝起きが最悪である。

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京都を楽しむ 後半《サクラテラスザギャラリー》

冬の京都は日が落ちるのが早く、ホテルに戻ってきた頃にはすでに暗く、受付のたいまつが大げさに燃えていた。

部屋に入るとシンプルながらにセンスのいい居心地の良い内装で、男2人でもまあまあ許せた。
夕食の18時には少し時間があったのでテレビを見ながら明日の準備をした。

時間になり、ケンと2人でレストランに入った。
宿泊料金に含まれている料理のコースは3皿で海の幸5品とスープ、和牛のステーキだった。
ボリュームはそれほどないので、食べた後に何軒かBARを回ろうかと予定していた。

ちょうどいいタイミングでLiveが始まり、ギターと女性ボーカルが心地よく聴かせてくれた。

白ワインと赤ワインをグラスで頼み料理を堪能した。
他にも追加で料理を頼むことができ、一品一品が驚くほど安い。宿泊客だけのレストランにしても不思議だ。
ドリンクのメニューを見てケンが笑っている。
「どうしたんですか?」
タカシがメニューを覗き込んだ。
「これ、本当なんですかね」
「頼んで見ましょうよ。」
そのメニューには全て500円のドリンクが載っていた。
竹鶴17年とジョニーウォーカーブルーをストレートで頼む。

感じのいいウエイターがウイスキーを持って来てくれた。
ショットツィーゼルの感じのいいグラスからそれらは優しく気品のある芳醇な香りを溢れさせていた。
タカシはジョニーウォーカーブラックが好きでよく飲んでいる。
ジョニーウォーカーブルーはそれの延長線上にあると言ってもいいのだが、完璧な香りとその期待以上の味、舌に乗せた時の上質な煙たさ、喉を通した後もずーと続く余韻。いやぁ、美味い!!
ホテルのBARなどで頼むと一杯3000円はする高級酒だ。それが500円で飲めるとは!!


その他、
響ジャパニーズハーモニー。
ロイヤルサルート21年。
ボウモアダーケスト。
メイカーズマーク46。
ブランデーいって、マーテルコルドンブルー。
貧乏性が出てしまい、ここぞとばかりに2人で飲んだ。
今夜はここで飲んでしまいたいとタカシは思っていたが、ケンはそろそろ行こうかと立ち上がった。


夜になり風が出てきた。
酔っているのを忘れてしまうほど寒かった。
駅に行き、地下鉄で烏丸御池まで行き、『京都サンボア』へ着いた。
1925年から続く歴史あるBARだ。
タカシもケンも初めてだった。

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中に入ると常連のお客さんが2組、マスターと楽しそうに話しをしていた。

「すみません、ハイボール2杯ください」
ケンはタカシの分も勝手に注文した。
わからないでもない、サンボアはとにかくハイボールが有名なのだ。
サントリー角の氷なしのハイボールっていうお決まりのパターンではなく、京都サンボア(河原町店)は竹鶴氷ありのハイボールだった。
グラスに大きめの氷を入れ、竹鶴を結構入れる。多分ダブルくらい(60cc)入っているんじゃないかしら。
そこにウイルキンソンの炭酸を入れる。
今まで、散々高級なウイスキーをストレートで味わって来たが、少し時間も空き、これはこれでまた美味い。
店内は年代物の栓抜きが壁やら梁やらに固定してあった。
思えば栓抜きは世界中にあるわけだし、昔から存在していたから集めてみると楽しいかもしれない。
キョロキョロと周りを落ち着かなく見てるだけでも面白かった。初めてなのに不思議と落ち着くBARだった。


帰りに締めのビールを買い部屋に戻った。

ホテルの中庭には自由に飲めるコーヒーやハーブティーなどが充実してあり、しっかり飲んだ後には嬉しいサービスだった。


次の日、ケンが起きる前に1人で大浴場に行った。
それほど広くもないが、サウナがあるのが嬉しい。
サウナに入り昨日1日のアルコールを飛ばした。

朝食は豊富で美味しく凝った料理のビッフェだった。ヘルシーな野菜料理も多く、疲れた内臓にゆっくり入って行った。大満足だ!

スタッフの方たちも親切で礼儀正しく、たかしの中では五つ星だった。
これが彼女とだったらどんなに最高なんだろうと心から思った。

オープンして間もないからか期間限定のプランだったが、この大満足の二食付きの内容で税込8,800円!
この値段で申し訳ないとさえ思わせてくれた。

京都を楽しむ 前編《錦市場から大原》

その日は朝から雪が降っていた。

タカシは身支度を整えると用意してあった小さなボストンバッグを持ってタクシーに乗った。
駅に着いたがまだ雪の勢いも弱まらず、外での待ち合わせには寒すぎた。
タカシにとって待ち合わせの相手のケンは同じバーテンダーの先輩にあたり、中に入って待つのは気が引けて雪の中外で待つことにした。
風も強く真冬の朝の寒さを痛感し、限界に達しそろそろ中に入ろうかと思ったところへケンがゆっくり歩いてやってきた。
13分遅れだ。
「おはよー。タカシ寒くないの?中で待ってればよかったのに〜。」と改札の方へ歩いて行ってしまった。
笑えない冗談だ。
後ろからドロップキックしてやろうかと思った。


2人は新幹線に乗り京都へ向かった。
明日は2人の友人が新しく開店させるバーのオープニングパーティーがある。
2人は昼から手伝う事になっていた。
それなら前日から行って京都観光しようと飲んでる席で決めてしまったものだから、男2人の一泊京都旅行が開催される事になってしまった。

午前中に京都に着き、とりあえずホテルに荷物を預けに行く。
京都の友人が取ってくれた「サクラテラスザギャラリー」という去年末に出来た新しいホテルだ。駅南口から歩いて5分ほどのところにある。
着いてみると、男2人で泊まるにはオシャレすぎる外観。受付も敷地内に入った屋外にある。
ストーブやたいまつが焚かれ、屋根があるので敷地の外よりは若干暖かい気がする。
ストーブの回りにはソファもあり灰皿が置いてあった。
ここで吸うタバコは美味しいだろうなぁと、やめたタバコを残念がった。
同じ一階にはレストランもあり、生演奏も毎日行なっているらしい。
レストランには壁があり一安心。
一泊2食のプランを予約してあり、ケンと生演奏を聴きながらディナー決定となった。

荷物を預け身軽になった2人は駅で、地下鉄バス一日券を1,000円で買い、地下鉄で錦市場に向かった。
烏丸線で10分程で四条駅に着き、そこから10分程歩き錦市場のアーケードに着いた。
細い通りの両サイドに小さな店がたくさんあり、いろいろ見て歩くにはとても楽しい。
途中で「みやこつる」という日本酒を買い、飲み歩き開始。

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フルーティーな甘さを強く感じる酒だ。
居酒屋で冷やで飲みたい美味い酒だった。
昼間に外で飲むには香りが強く、気温が低くて救われた。
おばちゃん達がアテを色々試食させてくた。
途中に立ち飲み屋があったので熱燗をいただく。
寒い外での熱燗はこれはこれで美味い。
つまみを2、3皿もらい昼ごはんとした。
グレープフルーツに穴を開け、中だけを攪拌してラムを注いで作るまさにフレッシュフルーツのカクテルをもらい急に南国の風を吹かせた。

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当たり前だけど雑で本当に美味かった。

お酒も入り温まった2人は錦市場を抜け大原に向かった。
行き先はケンが全て決めている。
タカシは大原が初めてだった。
「ケンさん大原は何があるんですか?」
「苔があるんだよ、苔に覆われた綺麗な庭を見に行くんだ」
この人は本気なのか冗談なのかよく分からない。
男2人でバスで30分かけて雪もちらつく中、苔を見に行くって…。

30分後大原のバスターミナルに着き、呂川に沿って坂を上って行く。
坂の途中に柴漬けの店があり、おばちゃんに試食を何種類かもらい、大根の柴漬けをお土産用にもらう。
ほんと美味しかった。
10分程歩いて三千院の立派な門が見えた。
受付を済ませ、靴を脱いで建物を回る。
この時期の板床は氷のように冷たい。
庭に出ると緑の絨毯に雪が所々積もっていて光を反射している。
ケンさんが見たいと言っていたのも分かる。
「苔ってこんなに綺麗なんだ」
溜息のように思わず言ってしまった。

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苔の中には小さく可愛らしいお地蔵さんもいて、思わず笑顔になっていた。
こんなに素敵な場所なのに人が少ないのもまたいい。
ゆっくり歩き1時間くらいかけて一周した。
ケンさんは苔の写真を撮り、池を覗いたまま動かなかったりしていた。
夕方になってたのでまたバスで京都駅まで行きホテルに戻った。

これから京都の夜を楽しもうとタカシはワクワクしていた。

 

イタリア サルディニア島 ワイン

義昭は静かな港町で、貿易会社の取締役として働いている。
50代終盤になり、定年までもう少しの年齢になった。
昨日も取引会社の接待の為神戸にまで行き、苦手な地酒を限界まで呑んできた。
ラグビーと野球で鍛えた身体としゃがれた声、笑顔の似合わない顔のせいか聞かなくてもは義昭が日本酒なら底無しに呑めると思われる。

「ほんとはワインが好きだ」とは言いにくい性格だ。

 

今日は義昭の妻、由美子の誕生日祝いでレストランを予約してある。

毎年由美子の誕生日だけは2人で予約して食事に行くことにしている。

昔を思い出し少し照れる。

 

いつもと変わらない声で「ただいま」と帰った。

少し遅れて由美子の声、いつもより少し高い気がした。

久しぶりに見る由美子のスカート姿に笑ってしまった。

少しムッとした由美子は「間に合わないよ」と急かしてくる。

予約の19時にはあと30分に迫っていた。
義昭は着替えることもせずにタクシーに乗り込んだ。

 

いつもは仕事の接待で使う店だ。
由美子と行くのは初めてで気恥ずかしさも覚える。
「いらっしゃいませ〜!!」
「お待ちしてました」
「今日はよろしく。 …あっ、妻です」
「初めまして!いつもお世話になってます!」
「こちらこそ主人が〜」
いつもより親しげに話すケンに由美子の緊張も和らいだようだ。

2人には広めの窓側の部屋を取ってくれてあった。

柔らかな暖色系の灯りが落ち着く和風モダンな造りだ。由美子も気に入ってくれたようだった。

港町の得意な魚介を贅沢に使ったイタリアンのコースと赤ワインを注文する。

 

ケンがワインを持って入ってくる。
「お待たせしました。本日はデューレというワインをお持ちしました。前菜からメインまで特に魚介類と相性の良いイタリア サルディニア島産のワインをお持ちしました」
上品な白を基調としたエチケットの赤ワインだった。

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「あまり聞いたことのないとは思いますがカンノナウというぶどう品種100%のワインです」

大振りなグラスに注がれたワインは深くも澄んだ赤にキラキラと輝く水面をしていた。
義昭はグラスに鼻を近づけてみた。
ふわりと濃厚なブドウの香りとアルコールが鼻の奥をキュッと締めた。

ケンが部屋を出たのを確認し、由美子と誕生日のお祝いの乾杯をした。
軽くワインを回して香りを嗅ぎながら口に含んだ。
樽っぽい香りを感じ飲んだワインはフレッシュさを持っており、しっかりした骨格があるのに飲みやすく繊細だった。
前菜からサラダ、魚料理と肉料理、生魚からしっかりしたソースまで何とでも相性良く、料理によってまた時間によっても顔を変えるてくれるワインだ。
今日みたいな2人でコース料理を食べるときにはとってもいいチョイスだと思った。
2人なので1本しか飲めないし、料理によって変えるグラスワインでは物足りない。

爽やかなフレッシュ感もあり、最後に甘さを感じるしっかりしたボディがちょうどいい満足感を与えてくれた。

 

こんなワインを作ってるサルディニア島
定年後に由美子と行く旅行先がまた一つ増えた。

 

めだかたちの里子計画

ケンの家では無加温で冬でも卵が産まれる。

室内で昼間は日が当たるので水温は15度くらいになる。

産み落とされた卵たちを小さな水道水の容器の中で孵化させ、ヒーターを入れたグリーンウォーターで育てる。


三寒四温の季節。
元気に成長した子供達を里子に出す事になり、ケンの家で増えたものを一つの水槽に詰め込んだ。

〈生き物〉
白メダカ
青メダカ
楊貴妃
ゴールデンアカヒレ
レッドチェリーシュリンプ
ヒメタニシ
レッドラムズホーン


水草
ルドヴィジア
オークロ
ウィローモス
ミクロソリウム

 

里子の行き先は小学生の甥っ子姪っ子の自宅。
手入れの仕方もわからないだろう。
という事で立ち上げて水質が落ち着いて、苔なんかも生えなくなってからあげることにした。

 

45センチスリム水槽
外掛けフィルター
ソイル(今回は余っていた黒の栄養系ソイル使用した)
照明

まあ、これだけあれば出来そうだ。

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水槽の底にソイルを敷きレイアウトして行く。
余っていたモスが活着した流木とルドヴィジアとオークロを植え他の水槽の水を入れフィルターオン。

次の日3割ほど水換え(カルキ抜き水道水)
一週間ほどしたら油膜と苔が目立つようになって来た。

エアレーションして貝とレッドチェリーシュリンプを水合わせして投入。

 

期待以上の働きはなく、結局ヒゲゴケの付いた水草はカットし、ガラス面やフィルターは人力で掃除。 あのツマツマは演技だったのか…

 

グリーンウォーターのメダカの幼稚園から、1センチくらいに育って来たものを30匹ほど水あわせして放つ。

 

そのまま二週間。

みんな元気なまま里子に出す準備が整った。

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里子計画は小学生でも世話ができ、滅多なことではダメにならない強いものだけで作った。

メダカたちやエビも大きく成長してまた子供を産んで増えて行く。

そんな楽しみを部屋の中で見ることが出来るよう何年も育てれるように準備したつもり。

 

さてさて、どうなって行くのやら…

水景に魅せられて

ケンは太平洋に面した静かな港街の小さなレストランでバーテンダーをしている。

 

ケンは小さな頃から水の中を眺めるのが好きだった。

現実とは全く違う未知の世界が広がっている気がして、その世界を覗いているのが至福の時間だった。

 

いつしかその世界を自分のテリトリーに切り取って持って来たいと思い水槽を買った。
その時から水景に魅せられていくこととなる。

 

そんなバーテンダーの周りの物語。